こんにちは!
復帰してからバサラ久秀うるさい私ですが、こんなごった煮なブログを覗きに来て下さる皆様へ心からの感謝を・・・ありがとうございます!!!

さて、久しぶりに新鬼武者の作文できました。
相変わらず私の書く蒼鬼は、紅い鬼さんにデレデレなご様子。

本編はぬるい割にけっこうあれな書き方している部分があるので、年齢制限つけております。
同性同士の恋愛描写が苦手な方もご注意ください。 
本編は続きボタンからどうぞ~ 
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二つ名のまこと <蒼鬼×天海> ※R-18

 

 

 

最初に出会った時、彼は面を被っていた。

紅い鬼を模した面の奥に光る両目の鋭さは、今でも思い出すと背筋にぞわりと悪寒が走る。

「・・・あの時の面・・・」

杯を片手に、ぽつんと言葉を発した相手に、天海が首を傾げた。

「ん?」

「鬼の面だよ、天海が最初に着けていた」

「・・・ああ。あれがどうした」

蜀台に灯された心許ない灯りがひとつだけの天海の部屋で、秀康と天海は向かい合って酒を酌み交わしている。

杯に満たされた酒を飲みほし、秀康は天海へ問う。

「あれって、もう無いのか?あのとき以来、見た事がないから」

相手へ酒を勧めつつ、天海は微笑しながら首を振った。

「あの面は、お前達が敵となるか味方となるか分からん状況で顔を知られたくなかったから被ったものだ。いつまでも仲間内であのような面を着けているのは気味が悪かろう」

「まあ、そうなんだけど・・・偶にはあの天海も見たいなとか。オレは格好良いと思うんだけどな」

自分が着けている角を模した額当てとお揃いになるのに、と続けたが、相手に笑われる。

「ふふ、それは残念だったな。お前に割られて、鬼面は卒業したのだ」

一戦交えた時に蒼鬼が気合いと共に放った一撃によって、天海の被る紅鬼の面は真っ二つに割られてしまったのであった。

「そっか、あの時はアンタの言動が訳分かんなくて、オレが勢いで割っちまったんだよなぁ・・・」

蒼鬼の言葉に天海は悪戯気に片眉を上げて、鼻を鳴らす。

「こちらは鬼面のお蔭で、蒼鬼の剣に顔を割られずに済んだ」

冗談まじりの返しと分かってはいても、秀康はその時の状況を思い返して、むきになって言い返す。

「あのなぁ、ほんとに斬る寸前だったんだぞ・・・天海が味方っぽく、もっと分かり易く出て来てくれれば良かったんだよ!」

「私にもお前の力量を試す必要があったのだ、あの場で生ぬるくは出来なかった。ただ少し予想外だったのが、蒼鬼が素直すぎる所で・・・」

己が作り出した十兵衛の屍の幻影など、心を静めて眺めればすぐに看破できるくらいの出来だったのに、頭に血が上った秀康ではすぐに見抜けなかった事を天海は言っているらしい。

「・・・どうせオレは単純ですよ・・・」

遠回しに相手から残念がられたと感じたらしい秀康が、むくれた声を出して酒に口をつけると、天海が肩を竦めた。

「いや、その性格が全て悪い訳では無いぞ?お前の心が持つ真っ直ぐさで、どれだけ私が救われているか。だが・・・先程の私の物言いで不快に感じたのならば、すまない」

僅かに気が引けた様な言い方をした天海へ、秀康は気安い様子で手をひらりと振ってみせる。

「まさか。天海の話し方で嫌になんかなるもんか。オレ自身の直らない部分を再確認して、ちょっと自分で情けなくなったんだよ。いまだにこの単純さで天海を困らせてるんだよな、ってさ。だから、そんな顔しないでくれ」

相手と己の杯に酒を満たしながら、天海が困ったように笑う。

「お前は・・・優しい男だな。そこまで此方に気遣いせずとも良いのだぞ」

煎り豆を口に放り込んで、秀康が不思議そうな顔をした。

「気遣い?違うよ。だってオレは天海のことが好きなんだから、アンタの話し方が好きなのも当然だろ?」

静かに酒を飲みかけた天海が、急に軽くむせる。

けほけほと咳き込む相手に蒼鬼が驚き、傍らに移動し背中をさすってやっていると、大丈夫だというように肩に手を置かれた。

「どうしたんだよ、珍しいな」

首を傾げる若者へ、落ち着きを取り戻した天海が呆れた様な目を向ける。

「蒼鬼・・・以前から言おうと思っていたのだが」

「なに?」

「その、事あるごとに簡単に好き、と言うのは・・・どうなのかと」

どうにも照れくさくて敵わない、と告げられて一瞬きょとんとした秀康だったが、直ぐに笑みを零した。

「ああそれ、わざと言ってるんだ!」

朗らかに言い切られ、途端に天海の眉間に皺が寄る。

「・・・わざと、だと?」

相手からのぴりっとした空気を感じ取った蒼鬼が、慌てて両手を振って言葉を続けた。

「ちょ・・・違う違う、わざとっていうのは天海への悪戯とかじゃなくて!」

「む・・・からかいの類ではないのに、わざととは・・・?」

そう、と秀康がはにかむ様な笑みを零す。

「オレ、今まで天海が好きだって思ってたのに言えなくて、そのずーーっと我慢していた分をアンタへ伝えたくて仕方無くてさ。だから言えるようになった今、口に出してるの!」

「・・・・・っ!?」

秀康の目の前で、眉間に皺を寄せたままの天海の顔が赤くなってゆく。

無言で顔を赤くしている相手に、秀康が驚きつつも恐る恐る声を掛けた。

「あれ・・・天海、どうした?大丈夫か・・・?」

はっと我に返ったような顔をした天海は、急いで杯に残った酒をあおると、秀康から少し距離を開けて背を向けてしまう。

「おい!なんでいきなりそっぽ向くんだよ!!」

急に天海から冷たい態度をとられた秀康は訳が分からず抗議の声を上げると、相手も背を向けたまま言い返してきた。

「なんでもない、少し飲み過ぎたのだ!」

「ウソつけ、いつもより舐める程度じゃねえか!なんか天海、変だぞ!?」

凛と結われた昼間と違って緩やかにまとめられている長い白髪を眺めながら突っ込みを入れると、その相手の髪が僅かに揺れる。

「・・・察しないか!!」

やっとの思いでこちらへ返したような天海の声に、秀康は暫く考えた後、成程と苦笑して酒瓶と杯を持って腰を上げた。

そして天海の後ろに胡坐を組んで座り酒を置くと、そっと両腕を彼の身体へ回す。

相手を後ろから抱き締め、長く煌めく白髪へ唇を寄せ、蒼鬼は優しく彼の名を呼んだ。

「天海」

相手は微動だにせず、無言で自分の腕の中に居る。

「天海、好きだ」

沈黙に構わず、秀康は言葉を続けた。

「恥ずかしがらせてごめんな。でも、オレはそんな照れてくれるアンタも好きなんだ。好きだから口に出して伝えたいし、見て居たいっていうのは・・・駄目か?」

相手を包み込むように抱き締めていると、ずっと無言だった天海が僅かに身じろぎをする。

若者が後ろからそっと天海の顔を覗き込めば、彼は赤い顔のまま戸惑い、言葉を探しているような表情をしていた。

返事を急かすことはせずに、秀康は相手の白髪へ口づけを落として、ぎゅっと抱き締め直す。

背中から伝わる秀康の温もりに、気恥ずかしさから思わず強張らせた己の心が少しずつ和らいで行くようで、天海はその温みを感じながら、ゆっくり口を開いた。

「・・・このような姿を、人に見られるのは慣れていなくてな・・・」

やっと言葉を紡いだ相手の流れを途切れさせないように、蒼鬼は静かに相槌を打つ。

「・・・うん」

「もう暫く、お前からの言葉に・・・このように驚いてしまうと思う」

「うん」

「だがそれは、お前の言葉が嫌なのではない・・・ということは、知っておいてくれないか?」

己の心情を確認するように語る天海の言葉に耳を傾ける秀康の顔はすでに緩んでいるが、相槌を打つ声は冷静に落ち着いた声を心がけている。

「わかった」

秀康の返答を聞いてから、天海は彼の腕の中で身体の向きを変え、若者に横抱きにされるような体勢になると、愛しげに此方を見つめる相手の瞳を覗き込んで、目を細め笑いかけた。

「嫌どころか・・・私も、蒼鬼を好いている」

笑顔を返した秀康は片腕で天海を抱えるように抱き締め、もう一方の手を彼の頬へ滑らせる。

「困ったな」

頬を撫でられながら、天海は相手の言葉に小首を傾げた。

「なにかおかしな事を私が言ったか?」

「その逆。天海がすっげえ嬉しい事を伝えてくれたから、離したくなくなっちまった。どうしよ」

首を振って照れくさそうに笑う秀康の顔へ天海も手を伸ばして、亜麻色の前髪を撫でる。

「ここはお前と私だけ。離す必要はないと思うが?」

穏やかに微笑む天海からちらと目を逸らして、蒼鬼が言葉を迷わせた。

「あー・・・その。だって、このまま離さなかったらさ、オレ」

そこまで言うと、若者は天海の顔へ己の顔をぐっと寄せる。

「アンタの全部が欲しくなって、我慢できなくなる」

間近に見つめる秀康の瞳には己を求める強い光が宿っていて、今までこの様な強い抱擁も直接的な口づけもされなかったのは、彼の精一杯の優しさからの我慢による賜物だったのだと天海はようやっと気付き、相手に対して申し訳ない気持ちを抱くと同時に愛おしさが胸に広がった。

懸命な秀康の頬へ手を添えて、天海も彼へ顔を寄せる。

「蒼鬼。我慢など、もうしなくていい」

互いの息が掛かるくらいの距離で告げられた言葉でも、決心のつかない秀康の目が泳いだ。

「でも、天海は慣れてないんじゃ・・・」

そんな彼へ、天海が頬を撫でながら笑いかける。

「ふふ、私はそこまで世間知らずな年上ではないのだが?秀康殿」

「・・・ええと・・・それって・・・」

まだ迷う若者の唇を人差し指でついと撫でて、浄化師は悪戯気に片眉を上げて見せる。

「蒼鬼。私にこれ以上の野暮を言わせるつもりか?」

「!・・・天海・・・っ」

ずっと我慢していた相手への触れ合いを、誘われる様に許された秀康はやっとの思いで名を呼ぶと、そのまま天海の唇へ己の唇を重ねた。

遠慮がちで軽やかな口づけが続いたのはほんの数回で、天海が秀康の首へ腕を回して甘えるような仕草をすると、相手の熱い舌が唇を割って口中へ侵入してくる。

舌を絡ませ合う艶めかしい水音に混じって聞こえて来る自然と上がり始めたお互いの息遣いに、二人は欲を駆り立てられて深い口づけを交わし続けた。

「・・・ん・・・・・ふっ」

強く抱き締められ、息継ぎも満足に出来ないような口づけに天海が鼻に抜けるような声を漏らすと、秀康の唇がゆっくり離れる。

「わるい・・・苦しかったか・・・?」

興奮からか掠れ声で小さく尋ねる秀康へ、天海は甘く笑い返して唇を寄せた。

「いや、とても心地が良くて止めたくなくなるが・・・ここで続きは・・・」

相手の言葉に、今まで冷たく硬い板間で抱き締めあっていた事に気付き、秀康は慌てて天海を横抱きに抱えて立ち上がる。

「っと・・・ごめんな、床に行こう」

相手と大差ない体格なのに、ひょいと難なく抱き上げられた天海は驚いて秀康の顔を見た。

「ま、待て蒼鬼!ほんの数歩、それくらい歩ける・・・っ」

焦る天海を抱きかかえたまま秀康は笑って歩き始める。

「いやだね。こんな大切な夜に、大事な天海を離すもんか」

「・・・ば・・・っか、もの・・・!!」

「ほら、そっぽ向かない!・・・天海」

耳まで赤くなってしまった顔を隠そうとした天海の額へ口づけをして秀康が語りかけると、彼は隠そうとした動きを止めて、それから少し迷ったあと若者の顎へ唇を押し当てた。

口づけをくれた天海へ秀康は幸せそうな笑みを見せると、抱き上げたままで軽く唇を合わせる。

そして到着した床へ天海を下ろすと、実はと頭を掻きながら肩を竦めた。

「アンタにこうして恰好つけているけど・・・こっちも、かなり余裕無いんだぜ」

先程までの熱は何処へやら、天海の肩を抱いたままそう話す秀康の声は少ししょげている。

「ふふ・・・なんだ、いきなり弱気になったな」

勢いの無くなった若者をからかうように、天海が相手の頬を人差し指で突いて笑い掛ければ、彼は顔を赤くして天海を見遣った。

「だ、だってさ!男に惚れたの、生まれて初めてなんだから仕方が無いだろ!?しかも・・・」

「しかも?」

言葉を促された秀康は少し戸惑い、赤いままの顔を俯け口元に手を当てて小さく唸ると、おずおずと口を開く。

「しかも・・・ええと・・・なんかオレ、天海のことが好き過ぎているんだ」

「ん・・・うん?」

己の人生の中で聞いたことも無い言葉が耳に入ってきた天海は理解出来ないまま取り敢えず相槌を打ってしまうが、蒼鬼は相手の疑問符に構わず話を続けた。

「このままオレが無遠慮に触ったらアンタを汚しちまいそうで・・・今まで抱く時、こんな気持ちになった事なんて無かったから・・・その、正直困ってる」

なにやら物凄く深い好意を寄せられているらしいことは天海にも理解出来て、相手の頬を触る手が止まる。

「そうき・・・それは、私を抱きたくない、という身体の反応では?」

同性との経験がなければあり得る気持ちだろうと尋ねるが、秀康は大きく被りを振って天海を強く抱き締めた。

「違うって!アンタに触れたいし、全部欲しいってオレの身体は言ってるんだ。でも、心では天海を抱く事が大好きなアンタを汚してしまうようで怖いって言ってて・・・ああごめん、やっぱ訳分かんないよな・・・」

秀康が懸命に言う通り、彼の身体は熱を孕んだ反応を表していることが抱き締められている天海にも分かる。

だが、己を汚してしまう、という若者の不安が分からなくて、天海は首を傾げた。

「蒼鬼・・・私は綺麗なモノなどではないぞ?汚れるとか汚れないとかいう問題などはないが」

「・・・その、感覚的なモンだよ。天海はいつも澄んだ様子で凛と立ってて、俗っぽいモンとは縁がなさそうな顔してるから、オレがこんなことして良いのかなって・・・」

要は、手が出しにくい奴だと言っているらしいと理解した天海が苦笑を漏らす。

「侍あがりの男に俗っぽくないなどと可笑しな事を言うのだな、お前は」

抱き締めている力を緩めて天海の顔を見つめた秀康は、困ったふうに眉を下げた。

「そうは言われても・・・オレの、アンタに対する正直な気持ちを伝えただけなんだけど・・・」

「ならば、その思い違いを教えてやろう」

「は、い・・・?・・・っうわ!?!」

己の胸元から向けられた綺麗な笑顔に見とれた秀康は、その笑顔の主に一瞬で押し倒された。

そしてそのまま天海に唇を塞がれ、相手の片手がするりと自分の寝間着の帯へ手が伸びる。

「んっ・・・てん、・・・っ!」

口づけを中断して声を上げようとしても、天海は秀康の顎を捕まえて唇を重ねてきた。

今まで見た事の無い情熱的な天海の様子に若い秀康は容易に囚われてしまい、しまいに極度の興奮から頭に霞がかかったようにとろんとした表情で相手の舌を追い、唾液を受け取り、舌を絡ませ合う。

そんな深い口づけを繰り返して、驚きと緊張で強張っていた秀康の身体が緩んだ頃合いに、天海が漸く唇を離して微笑みかけた。

「蒼鬼は、愛らしいな」

「・・・へ・・・?」

「これだけ我慢していれば苦しかっただろうに」

「あっ・・・!ちょ、てんかい・・・っ」

屹立している自身を下穿きごときゅうと握られ、秀康がその刺激に腰を浮かせると、鼻先に口づけが落とされる。

「一度抜くと良い。その後で色々教えよう」

天海は秀康の耳元でそう囁くと、息が上がって上下している相手の喉仏を舌先で撫で上げ、身体をずらした。

「抜くって・・・うぁっ!?そこ、待っ・・・」

「お前が待てない状態ではないか」

「ちが・・・あ、ぁッ!!」

下穿きを取られ、既に蜜でぬかるむ自身を手で緩く捌かれた秀康は咄嗟に声を殺そうとしたが、続いて天海の口に咥えられた刺激に負けて悲鳴のような声をあげてしまう。

好きで好きで恐れ多くて、寝間着の帯も自分の手で解け無いくらいに惚れ込んでしまった相手に押し倒され、口づけられ、挙句に己自身を咥え込まれた秀康は後ろめたさと妙な興奮で息を荒げる事しか出来ない。

泣きそうな声で喘ぐ若者の声を聞きながら、天海は相手のモノを喉の奥まで咥え込み、締め付けながら口で捌き上げてやる。

「てん、か・・・っ!やば、離せ・・・ッ」

暫く舌を絡ませながら捌く行為を続けていると、秀康が切羽詰まった声をあげ、彼自身も質量を増して硬さが増した。

「あッ、駄目だっ・・・逝く、から・・・っっ!・・・ん、うぁッ!!」

秀康の懇願にも似た言葉など無視して、彼自身の変化に合わせて捌く速度を速め、蜜が滲みだす鈴口に舌先を入れ込むように刺激を与えれば、我慢の限界を超えた秀康の腰が跳ね、天海の口中に彼の熱が放たれる。

「・・・っは・・・ぅ・・・」

彼の熱を全て口で受け止め飲み込んだ天海が顔を上げると、若者が目元を腕で隠して上がった息のまま脱力していた。

「・・・蒼鬼、大丈夫か?」

秀康の胸元へ戻り、そっと声をかけると、彼は腕をずらして潤んだ目で此方を見る。

「あー・・・・・もう・・・出るから、離せって・・・」

「私がああしたかったのだ、そんな顔をするな」

情けなさそうな声を出した秀康を安心させるように微笑みかけ、彼の頬へ口づけをすると、抱き寄せられて口元を指でなぞられた。

「オレので、アンタの口を汚しちまったな・・・水、飲むか?」

否、と天海が微笑したまま首を振る。

「汚れてなどいない。好きな者を欲しいと願うのは当然のことだろう?」

さらりと言われた甘い言葉に、秀康が鼻を掻いて照れ笑いした。

「やっぱり、天海には敵わねぇわ・・・」

素肌を晒している相手の胸元へ手を添え、肩口に頭を預けて天海は静かに目を瞑る。

「そんなことはない。私をこのような気持ちにまでさせたのは、蒼鬼が私を想ってくれていると真っ直ぐに教えてくれたからだ、そんなお前に私が敵う筈も無かろう」

「・・・はは、ありがと」

己の肩口に散らばっている相手の長い白髪を優しく指で梳きながら、秀康が天海を呼んだ。

「なぁ天海・・・頼みがあるんだけど」

天海が閉じていた目を開けて秀康の顔を見上げようとすると、相手は己を抱き抱えて身体を反転させる。

秀康から腕枕をされて見下ろされる格好になった天海は、相手の胸元へ手を添えて首を傾げた。

「どうした?改めて頼みごととは」

「あのさ、二人の時は・・・蒼鬼じゃなくて、名を呼んで欲しいんだけど・・・」

「秀康、と?」

うん、と若者がはにかんだ笑みを浮かべる。

「ずっとこの名前は嫌いだったんだけど、やっぱりオレの本当の名前は結城秀康だからさ。それに天海に呼ばれるのだけは嫌じゃなくて、なんだか嬉しいんだよね。・・・いいか?」

大事な場面で己の本名を呼び、心を律してくれる天海が好きなのだと秀康は言った。

「ああ、良いとも。秀康」

両手で秀康の頬を包み、優しく名を呼ぶと、彼は嬉しそうに目を細めてうんと返事をしながら天海の唇へ軽やかな口づけを落とす。

「もっと呼んでくれ」

そう囁きながら自分の首筋をなぞるように口づけを続ける若者の髪を、天海は擽ったそうに笑いながらくしゃりと撫でた。

「ふふ・・・秀康?」

「もっと」

鎖骨の辺りを舌先でなぞられている感覚を確かめながら、相手の愛らしい我儘に天海は口元に笑みを残して小さく肩を竦める。

「秀康・・・一晩中呼ばせる気か?」

天海の肌から唇を離して顔を上げた秀康が、にっこり笑い返した。

「ああ。ずっと天海の声を聞きたい」

此方の顔に手を伸ばす天海の動きに合わせて身体をずらし、秀康が目線を合わせれば、相手が眉を下げて甘く笑む。

「あいわかった・・・秀康・・・っ」

彼の笑みに引き込まれる様に言葉途中の唇を塞げば、天海の腕が秀康の首筋へ回された。

「天海」

「ひでやす・・・んっ」

「天海、好きだ」

口づけの合間に交わされる声に、少しずつ色が混じって行く。

そして秀康の温かく大きな手が愛おしむ様な動きで己の肌に触れ、撫でてゆく感触に心を囚われた天海は声にならない声で相手の真の名を呼び続けた。

そんな彼の声を聞きながら肌に触れていた秀康が、天海の耳元へ口を寄せる。

「ずっと、ずっとそうやってオレの名を呼んでいてくれ・・・天海が秀康と呼んでくれるなら、オレはどんな事があっても・・・結城秀康で居られる気が、するからさ・・・」

熱に浮かされたように掠れた声で告げられた言葉に、ただの情愛だけではない想いが含まれている事を悟った紅き鬼は目元を潤ませたままで小さく頷いた。

「お前が願うのならば、私も応えよう。秀康、お前を」

繋ぎ止めておく、と続けたかった言葉は、相手の熱から声にならない夜だった。

その甘い口約束の先に必ず、という確証は天海自身にもない。

でも秀康になら、と自信を持って思える己が居る。

真の名を隠した紅き鬼と、そんな彼へ己の真の名を預けた蒼き鬼がお互いこの口約束を思い出すのは、まだ先の話であった。

 

 

(終わり)

 

 

 

 

 

久々、新鬼武者の作文でした。

本当は色々もっと甘い中味を書こうとしていた作文でしたが・・・物足りない感じで終わらせてしまいました。

ちゃんと書くと一万文字越え確定だったので挫けてしまって。

松永の脳内設定ですと、相手に対する気持ちの強さは蒼鬼>>>>>> <<<天海くらいな感じで書いております。天海の蒼鬼に対する愛情は人並みに強いし、そもそも特定の誰かを好きになるという感情を切り捨ててきた天海が蒼鬼を好きだと認識を持ったことだけでも凄い筈なのに、蒼鬼はもう天海を溺愛くらいに好きになっている設定なので矢印半端ないです、本当はこの倍近くあるかも、蒼鬼の天海への愛情www

こう、名を呼び合うって良いなと・・・「君の名前を呼んだ後に」って歌があるのですが、その題名から妄想してみました。