こんにちは!
立て続けに新鬼武者の作文ばかりです。
それにもかかわらず、覗きに来て下さる皆様へ心よりの感謝を申し上げます!!

戦国無双4-Ⅱがもう少しで発売なので無双関連とか、スメラギが発表されたからBSR久秀とか色々やりたいのは勿論ありますが、欲張ると大抵収拾がつかなくなるので、コツコツ自分で書きたいものをやらせて頂きます。

今回の鬼武者話は、アップ済の「Missing Beat」の後日という設定のお話です。
蒼鬼×天海な関係のお話となっております。
お暇潰しになれば幸いです・・・


 

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Believe In Life
 (蒼鬼×天海)

 

 

幻魔との戦いを続ける日々の隙間に訪れる僅かな休息日、天海は戦闘で使っている護符を作っていた。

集中し念を籠めながら筆を走らせていたので誰かが近づいてきた事に気付かず、ふと息をついて目線を動かせば、いつの間にか自分の机の前に若武者が背を向けて座っている。

「蒼鬼、どうした」

天海の呼びかけに気付いた秀康が振り向き、軽く伺うように首を傾げた。

「あ、邪魔だったか?」

「構わない。これは特に急いで作るモノでも無いしな・・・なにか、あったのか?」

丁度墨が無くなった硯へ水を足しながら若者へ問うと、相手が明るく笑って首を振る。

「そんな深刻そうな声を出すような話じゃないんだ。ちょっとさ、天海に聞いてみたい事があったから」

「私で分かる事ならば答えよう」

静かに墨を磨りはじめながら耳を傾けるが、肝心の秀康の声が一向に聞こえてこないので、天海が不思議に思い顔を向ければ、相手は黙って此方の手元をじっと見つめていた。

「・・・蒼鬼?話があるのではなかったのか」

言動が一致しない若者は、天海からの問いに迷うように目線を泳がせて、困ったように頭を掻く。

「あー・・・やっぱり、後にするわ。すっげぇつまんない事だし・・・」

邪魔をした、と腰を上げかける秀康の横顔に妙な暗さを感じて、天海が咄嗟に彼の腕を掴んだ。

滅多に自分から他人に触れる事の無い天海が己の腕を掴んでいる事に秀康はびっくりして、腰を上げかけたまま動きを止める。

驚いた表情の若者へ、天海は落ち着いたふうを装い、小さく頷いてみせた。

「実は私も少し退屈をしていたのだ。護符作りはもう終わる所だから蒼鬼、少し付き合え」

「え・・・?あ、うん・・・」

秀康をその場に座り直させた天海は手早く残りの護符を書き上げ片付けを済ませると、彼を連れて外へ出る。

人気の無い河原を二人でゆるりと歩きながら、秀康は穏やかに晴れた冬空を見渡した。

「少しずつ、日があったかくなってきたなぁ」

「そうだな。節分も過ぎたし、これからどんどん春めいてくるだろう」

のんびりとした声を出して目を細める若者を横で見て、天海も穏やかに返す。

「節分といえば蒼鬼。あの時は随分派手に追い掛け回されていたな」

ああ、と秀康がげんなりした声を出して溜息をついた。

「三人に鬼退治だーって本気で追い掛け回されたんだぜ?ひでぇよな・・・ってそうだ!」

節分の夜の出来事を思い出していた秀康が何かに気付いたらしく、大きな声を上げて天海を見る。

「なんだ」

「アンタだって鬼役だったのに、何でオレだけ追い掛け回されたんだよ!?」

確かあの晩、豆まきをする時になって鬼役を作ろうと言う話になり、仲間内で勝手に仕立て上げられたのが蒼鬼と天海だった。

『ホントのオニならぶつけ甲斐があるだろ!』

と十兵衛が悪戯気な笑顔とともに言い切った結果である。

文句を言ってやろうと唇を尖らせたが、子供の決定を覆すのも大人気ない、と天海から諦め顔で諭された蒼鬼だったのに、いざ始まった豆まきが幻魔退治に秀でた者達の闘争本能を刺激したのか遊びで済まないくらいに壮絶な鬼退治と発展して、最後の方は蒼鬼も鬼武者に覚醒してやろうかと本気で思うくらいの節分となったのであった。

しかしその鬼の苦境時、もう一人の鬼役である天海の姿がいつの間にやら見えなくなっていた気がするのである。

「天海、あの時どこに居たんだよ!?!」

自分ばかり大変だったのに、と噛みつきそうな勢いで問われた天海は真顔で首を傾げている。

「何を言っている、私もそこに居たぞ?皆がお前の方ばかり追い掛け回しているのを観察していた」

「かんさつ・・・!?ちょっと、気配を消してないで助けろよ!」

「いや、お前の動きがなかなか良い身のこなしだと思って感心していたのだが・・・ふふ、すまん」

傍から見ていた豆まきの様子が面白かったのか、くすくすと思い出し笑いを漏らす天海の柔らかい表情に、秀康の胸がひとつ、鳴った。

「ま・・・またそうやって褒め殺しで誤魔化そうとして・・・!」

赤い顔をして抗議をする秀康に、天海は困ったような表情で悪かったと告げれば、相手はそれ以上の文句を止めて此方をじっと見つめ、ぽつりと言葉を発する。

「・・・じゃあ、来年の節分は、天海が鬼役だからな?」

「うん・・・?来年も、この面子で豆まきをするのか?」

来年どころか、明日の行方すらも不確定な情勢な中での秀康の言葉に、天海は驚いて瞬きを繰り返せば、若者は力強く頷いて笑った。

「ああ、勿論!秀吉や幻魔をぶっ倒して、平和な日ノ本にしてからってのが先だけど!」

「平和・・・そうだな・・・」

ちらりと天海の視線が揺れる。

今、自分たちがこうして集っているのは、幻魔に蹂躙されている豊臣一派を倒す為だ。

その共通の目的が達成されれば、皆で共に歩む必要が無くなることは過去の経験から知っている。

ならば、来年の節分など自分は皆と別れているのではないか、と天海が遠くを眺めるような目つきになった時、ぐいと肩を掴まれた。

我に返ると、少し怒ったような秀康の顔が間近にある。

「ほらまた、そんな顔をする。オレが前に言った事、もう忘れたのか?」

―――オレは、アンタを残して居なくならない。

自分を独りにさせないと真摯な顔で語りかけてくれた秀康を思い出し、天海は申し訳なさそうに肩を竦める。

「・・・すまん、つい悪い癖が出た」

「やっぱり!その癖が直るまで、何回でも言うからな!!」

「なんと・・・これは耳にタコが出来るな・・・」

いささかうんざりした様な声を上げる天海へ、蒼鬼がにやりと笑いかけた。

「まさか天海、物覚えに不安が、とか・・・っ!?いででっ」

軽口が過ぎた若者の頬を思い切りつねり上げて、天海がにっこり微笑みかける。

「今度年寄り扱いしたら、正座で説教だからな・・・蒼鬼?」

「・・・はい・・・スミマセン・・・」

つねられた頬をさすりながら神妙な顔つきで返事をする秀康に妙な可笑しさがあって、天海は我慢できずに笑い声を漏らした。

「ふふふ、しかしそう言った手前、私も気を付けなくては。この騒ぎが収まったら、お前に世界を見せると約束したのだし、同じ事を繰り返すのは互いに良くなかろう」

天海の言葉に、蒼鬼の顔がぱっと明るくなる。

「そうだよ!天海はオレに世界を見せてくれるんだろう?実はすっげぇ楽しみにしてるんだ!!」

「私もだ。お前に広い世界を見せて、そこから蒼鬼がどのような生きざまを見つけるのか、傍で見たいと思っている」

微笑みながらそう返すと、秀康はわずかに顔を赤くして口籠った。

「ええと・・・天海、あのさ。聞きたいことがあるんだけれど・・・」

気持ち不安げな視線を送ってきた若者へ、穏やかな視線と頷きで先を促すと、相手は頷き返して口を開く。

「・・・ちょっと前に、オレが天海に好きだって言っただろ?」

あの時の予想外の告白を思い出し、天海はまだ答えを出せていない後ろめたさに目線を落とした。

「・・・ああ。いまだ返事が出来ず、そのままにしてしまっていて、すまない・・・」

俯いた天海へ、そっと笑いかけて蒼鬼は首を振る。

「いいや、急がないって言ったのはオレだからいいんだ。だけど・・・あれ、もしかしたら・・・凄く迷惑だったんじゃないか?嫌だったのに我慢して聞いてくれたんじゃないか?それで返事が出来ないんだったら教えて欲しいって思ってさ。オレ、鈍感で察することが出来ないから・・・」

秀康の言葉に驚いて顔を上げると、彼は苦しそうに笑っていた。

「天海は優しいからさ、つい調子に乗っちまうんだ、オレ。ごめんな」

「!それは違う、違うぞ・・・蒼鬼が謝らずとも良い」

咄嗟に彼を守る言葉が見つからず、どうにか返答をしながら天海は足りない言葉を補いたくて秀康の片手を取る。

手を取られ、びくりと小さく震えた相手の顔から笑みは消え、ただひどく苦しそうな表情をしていた。

独り思い詰めて強張ってしまった秀康の心を解すように、天海は彼の手をゆっくりと撫でる。

「すまなかった。私が、蒼鬼の優しさに甘えて中途半端にしていたことが悪いのだ。前にも言ったと思うが、お前からの言葉で迷惑だとか、嫌な気分になったことなど今まで一度も無い。・・・それは分かってくれるか?」

「・・・・・うん・・・」

秀康が小さく頷いた様子を確認すると、天海は手を撫ぜながらゆっくり口を開いた。

「あの後、ずっと考えていた。蒼鬼からの言葉は嬉しかったのに、なぜ私は直ぐに返事ができないのかと・・・私自身の不足があるのは以前言った通りだが、もうひとつ、お前に対する気後れがあるのだと思う」

「気後れ・・・?」

ちらりと此方を見遣る秀康の視線を受け取って頷くと、言葉を続ける。

「私が蒼鬼を好きだと自分自身で認めてお前に告げれば、永く共にありたいと願い始めるだろう。だが、私はきっとお前より先に生を終える身・・・蒼鬼には、その残され独りになる哀しさを経験させたく無いと思ったのだ、私のように」

二人で生きる大きな幸せを知れば、死による別れで離れてしまった時の独りが以前の独りよりも辛くなることを天海は身に沁みている。

その痛いほどの辛さや深い哀しさを、自分が大切に想う相手へ感じさせたくないと、いつからか天海は思うようになってしまったのだ。

「だから、蒼鬼とは今まで通り仲間としての距離で過ごして行こうと、一度は決めたつもりだったのだが・・・お前にそれを告げる事が出来なかった。私の踏ん切りの悪さから、このようにお前を思い詰めさせていたとは知らず、本当にすまない」

申し訳なさそうに言葉を紡ぎ終えると、天海は秀康の手をきゅうと握り締める。

思ってもみなかった相手からの話を聞き、蒼鬼は目を丸くして此方を静かに見つめている天海と視線を合わせた。

「それって・・・じゃあ天海は・・・」

天海は合わせていた視線をわずかに外して少し考えた後、気恥ずかしげに微笑する。

「ここまで言っておいて誤魔化す訳にもいかんな。私も、蒼鬼の事は好いている。だが・・・」

続きを言いかけた相手へ、秀康は軽く手を上げ言葉を止めさせて、肩を竦めた。

「アンタの方こそ、思い詰め過ぎだよ」

そう言って、自分の片手を握ってくれている天海の手の上に、空いていた手を重ねる。

「オレは、天海と一緒に生きていける時間が欲しいんだ。いつやって来るか分からない別れの先にあるかもしれない辛さに怯えて、いま抱えてる好きって気持ちを抑え付けて、痛みが無い程度の付き合いでアンタとやって行きたいなんて思わない。それじゃあ、オレ自身が天海をこれだけ好きになった意味がないと思うからさ。それに、ちゃんと好きだって言えないままアンタと別れてしまえば、オレなら死んだ後も後悔するって感じたから、ああして気持ちを伝えたんだよ」

だから、と蒼鬼は言葉を続けて天海へ力のこもった視線を送った。

「天海にもそんな後悔をさせたくない。オレの事をほんとに好きなら・・・好きだって、それだけを言ってくれ。今は、その一言だけがオレと天海にとって凄く大事だと思っているから。・・・天海?」

言い訳も余計な心配もいらない、といったふうな若者の優しい笑顔に、年上の理論で重く固まっていた天海の心がふわりとほぐれて軽くなった気がする。

でも、相手のように素直な気持ちを口にするまでが難しくなってしまっていて、天海が目線を泳がせ迷っている時も、秀康はただ微笑んで待っていてくれた。

随分と言葉に迷ったあとで、天海は漸く秀康の名を呼ぶ。

「・・・蒼鬼」

低音で小さく呼びかけられた若者は、うんと応える。

ずっと待っていてくれた秀康へ、天海は泳がせていた視線を戻すと、目を合わせて頷いた。

「私は、お前のことが好きだ」

天海の言葉を聞いた秀康は、微笑みから満面の笑顔に変わる。

「ありがと・・・!」

先程までの凛々しい様子から一変し、無邪気な笑顔を見せる若者を見て、天海も笑みが零れた。

「ふふ・・・蒼鬼は表情がころころ変わって面白いな」

呑気に笑う相手に、秀康が大仰に膨れて見せる。

「あのなぁ・・・オレをそんなに忙しくさせてる原因が、誰のせいだと思ってるんだよ!」

「悪かった、そう怒るな」

「天海は何でも難しく考えすぎて、ややこしくしちまうんだよなぁ」

渋い顔で小言をいう秀康に天海は反論できず、笑いが苦笑に変わる。

「そう言ってくれるな、それなりに経験すれば臆病にもなってしまう」

「まあ、天海のそういう所に助けて貰ったりもしてるし・・・文句ばっかり言ってたら悪いか・・・」

ぶつぶつ独り言のように話している秀康を前にしたまま、ちらりと周囲に人気が無いことを確認すると、天海はおもむろに相手を抱き締めた。

「!?うわっ・・・てんかい!?!」

抱き締め返す余裕も無く、驚き固まっている相手の胸元に耳を寄せ、目を閉じて天海がくすりと笑う。

「嗚呼、鼓動が速いな。驚かせ甲斐があった」

自分の胸元で可笑しげに揺れる長い白髪の間近さに、秀康の頬が熱くなった。

「あ・・・ったりまえだろ!!不意打ちされれば・・・」

「蒼鬼、ありがとう」

照れ隠しに言い返そうとした秀康の耳に、天海からの静かな感謝が届く。

声を聞いて言葉を止めた相手の胸元から耳を離し、肩口に額を預けて天海は再び口を開いた。

「お前のお蔭で、私はつまらない我慢からの大きな後悔を作らずに済んだ。蒼鬼は、いつも私の想像を超えた明るい道を示してくれる・・・私に生き続ける喜びを教えてくれる、その優しさが好ましい」

素直に自分へ対する気持ちを告げてくれる天海に愛おしみが増して、秀康は相手の体に腕を回してぎゅっと抱き締め返す。

「・・・そんなこと無いさ。オレの方が、天海からいっつも助けて貰ってる。強くて、格好良くて、美人な浄化師どのは、出会った時からオレの憧れなんだ」

そう伝えると、天海が額を己の肩口へ更に押し付けるので、おやと目線を彼の横顔へ向けると珍しく耳まで赤くなった顔を隠そうとしているらしい。

「天海・・・そんなにくっついたら苦しいだろ?」

含み笑いをしながら尋ねてみれば、秀康の背中に回された天海の手が、抗議のつもりなのか言葉の代わりに彼の背をとんと叩いた。

そんな相手の反応が嬉しくて、秀康は緩みっぱなしの顔で天海の白髪へ軽い口づけを落とす。

「もう少し、このままで居ても良いよな」

「・・・ああ」

蒼鬼は人気のない場所を作った原因の幻魔に不謹慎ながらも少しだけ感謝をして、顔の赤みが引かないまま自分の腕の中にいる相手の髪を優しく撫でた。

 

 

(終わり)

 

 

 

 

 

 

以前上げたMissing Beat の後、という流れのお話でした。

Believe In Life(人生を信じている)」という題は、私の好きな歌から。

蒼鬼と一緒に生きて行く人生を決めて信じて行く天海、というイメージです・・・伝わりにくい・・・?

長く独りで生きてきた天海が、苦しいばかりの生だと思っていたところに、明るく朗らかな蒼鬼との出会いがあって、彼との関わりから生き続ける事に対する気持ちが前向きになっていったら良いなと思って書いてみました。

天海のような人は、人生とは修行なり、という言葉を地で行きそうなタイプだと勝手に決めつけているので・・・

蒼鬼も、そんな天海の根本は理解して大事にしてくれつつ、もうちょっと緩く生きても大丈夫だよ、一緒に羽伸ばそうぜ~って笑いながら手を引いて明るい方向へ歩んでくれそうな子だと・・・ね・・・随分持ち上げ感が凄いwww

それか、延々修行なんて息が詰まる!と程よく抜け出す調子の良さが悪く映らないタイプかも知れないなぁ、蒼鬼。