此方ではお久しぶりです・・・な作文が新鬼武者!?!
スミマセン、久しぶりにゲームを引っ張り出して来たら、南光坊天海さんにドハマりしてしまって・・・十年近く前の作品ですが、設定をご存じの方がいらっしゃれば、お暇潰しにでも・・・!

軽く人物設定を申しますと、蒼鬼(結城秀康)は新鬼武者の主人公で二十代、ちょっとアホな子ですが責任感が強くて元気な鬼武者くん。此処では天海が大好き設定です。
天海さん(浄化師)は実際蒼鬼より二回り近くも年上なのですが、鬼の力のおかげで 三十~四十代くらいの見た目。でも髪の毛は真っ白で、赤い鎧に白髪のポニーテール姿が似合う初代鬼武者さん。生真面目で幻魔倒す事だけが自分の生きる道だと思い込んでいるので、恋愛感情とかいうものはどこかに置き忘れてきたような、堅い御方です。

実際の鬼武者の設定より随分違う解釈で書いているので、 原作ご存じない方でも気軽に眺めてやって頂けたら嬉しいです・・・!
※掲載後、部分修正致しました。

 

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Missing Beat (新鬼武者 蒼鬼×天海設定)




「蒼鬼、ちょっといいか」

鎧を付ける前の天海に呼ばれて、秀康が彼の部屋に入ると、相手が櫛を差し出して困ったような声を出す。

「悪いが、髪結いを手伝ってくれないか」

「?良いけど・・・珍しいな、いつもは一人でさっさと支度しちまうのに」

櫛を受け取りながら秀康が意外そうな声を出すと、天海も肩を竦めて見せた。

「私もそのつもりだったのだが・・・今日はどうしてか、上手くいかないのだ」

「まぁ、そんな時もあるさ。いつも通りに纏めればいいのか?」

興味深げな様子で自分の後ろに回り込む秀康に対して軽く頷きながら、天海は軽く目を瞑る。

「ああ、手間をかけさせるが頼む」

長く滑らかな白髪へ櫛を通しながら、秀康はほうと溜息を漏らす。

「天海の髪って、ほんとに真っ白だよな。それで此処まで長いと、きらきら光って綺麗だ」

実に素直な若者の言葉に、天海は目を開けて視線を泳がせたあと、ぼそりと声を出した。

「・・・褒められるのは悪くないのだが、本心では切りたい」

「へ?邪魔なら切ればいいじゃん」

秀康から眺める天海の背中が、暫く言葉を探しているような雰囲気を漂わせる。

「・・・・・阿倫が切るなと煩くてな・・・」

言いにくそうにしながら告げられた返答に、へえ、と手を動かしながら秀康が朗らかに笑った。

「成程ね、阿倫ちゃんの言う通りだ。アンタにはこの髪型が似合ってるもんな」

あっさりと自分の戦友の言葉に賛同した蒼鬼に天海が驚いたらしく、ぴくりと僅かに顔を動かす。

「・・・そうなのか?私は短く切って、もっと動きやすい姿が良いのだが」

機能的な部分にばかり重点を置くような天海の言葉に、秀康は呆れた様な声を出した。

「なに言ってんだよ。これ以上ガチガチな格好になったら、天海が天海様、に格上げされちまってつまんなくなるじゃん。オレも、アンタのこの髪型が好きだぜ。髪型くらいは遊ばせとけば良いんだよ」

相手からの気楽な返答に、困ったような顔をしていた天海が小さく笑い出す。

「ふふ・・・髪型くらいは遊ばせる、か。お前の言葉で言われると、悪くない気がしてくる」

「そうそう、天海は最初、笑う事もしなかったような所があるんだから、尚更こういう洒落っ気は出しとくもんだ」

そう言いながら秀康は髪を纏め上げると、天海から髪留めを受け取って結い終える。

「・・・っと、これでいいか?」

「適当で良い、纏まっていれば。助かった蒼鬼」

仕上がりなど気にしない物言いの天海に苦笑いしつつ、秀康は相手の前に回って己の仕上げた髪型を確認すれば、彼は小さく声を上げた。

「あ、悪い!いつもより前髪がだいぶ落ちてたよ」

「?私は別に気にならないが」

そう言いつつ前髪をかき上げるような仕草を見せた天海の手を抑えて、蒼鬼がじっと相手の顔を見つめる。

言葉も出さずに此方を見つめる秀康の視線に、天海が訝しげな表情で見つめ返した。

「・・・なんだ?」

伺う様な相手の声音に、秀康がはっと我に返ってそわそわし始める。

「・・・ちょっとさ、前髪、触っても良いか?」

「だから何故」

「すぐ直すから!変なようにはしないから、な!!」

天海が返事をする前に、蒼鬼が手に持っていた櫛を彼の前髪の辺りへそっと当てた。

不可解そうな表情をしながらも、天海は拒否する理由も無いので黙って秀康のされるがままになっている。

ほんの短い時間で秀康は天海の前髪をいつもより多めに作り、髪から櫛を離して様子を見ると、ひとつ頷いて嬉しそうに笑った。

「なぁ天海、今日はこれで行かないか?」

「・・・お前はなにをしたんだ」

眉根に軽く皺を寄せながら鏡を覗き込むと、前髪が下ろされて幼げな様子に変わってしまった自分が映っている。

「前から思っていたんだけど、やっぱりアンタは若く見える顔つきだよな」

楽しそうに天海へそう伝えるが、相手は鏡からついと目を外すと、戸惑い気味に此方を見た。

「このような髪型、私には」

困惑したふうな言葉を言いかけた相手へ、秀康がにかっと笑って親指を立てる。

「いやいや似合ってるって!オレはこの天海も好きだぜ!」

「・・・むしろ、お前には嫌いなものが無いのではないのか?」

熱烈な褒め言葉に、照れ隠しから呆れた様に切り返せば、蒼鬼が嗚呼と顎を撫でつつ思いついたような声を出した。

「あー・・・そっか、天海のことはだいたい好きだからなぁ、オレ」

「・・・・・・・・」

恋愛感情の好きという言葉ではない事くらいは分かっている。

しかし人間的な好きという意味でも、ここまで自分に対して素直に真っ直ぐ伝えてくれる人物に出会った事のなかった天海は、その好意に対してどう返して良いか分からず、黙り込んでしまった。

ずっと長い間、感情を押し殺しながら幻魔と独り戦ってきた男にとって、目の前の朗らかな若者を始めとした仲間と呼べる存在達と気軽に語らい、笑い合うのはすぐに出来る事では無い。

もちろん仲間がいる事は喜びであり、心強くもあるが、天海にとってはその後に必ず訪れるであろう別れという出来事が経験上身に沁みているから、相手から踏み込まれると反射的に一歩引いてしまうのだ。

「また、そうやって難しい顔して黙る」

ぽんと言葉が投げかけられ、我に返って顔を上げれば、蒼鬼が少し寂しそうな色を滲ませて微笑していた。

「ほんとに似合ってるから、俺は褒めたんだけどな・・・アンタが嫌だったら直すよ」

秀康は静かにそう言うと、優しい手付きで櫛を天海の髪へ当てた。

「いや、そうではない、不快だった訳では無いのだ・・・」

褒められたのに、上手くありがとうと言えない己が居ることすら伝えられず、天海は言葉を続けられないまま目線を落とし、秀康からいつも通りの髪型へ直してもらって行く。

「あのさ、天海」

暫く無言で天海の髪を直していた秀康が、ぽつりと言葉を落とした。

「オレ、アンタの昔は全然知らないけど・・・取り敢えず今は、独りで考え込む必要はないと思うぜ」

目を上げれば、秀康が真っ直ぐな瞳をこちらへ向けている。

「蒼鬼」

「オレは居なくならない。勿論、阿倫ちゃんに十兵衛にお初にロベルト、あとみの吉もアンタの傍に居る。だからさ・・・そんな、独りぼっちみたいに寂しそうな顔するなよ、天海」

前髪の手直しは終わっているはずなのに、髪から手を離さず一途に語りかけてくれる秀康の優しさに対して、天海は申し訳なさそうに首を振った。

「・・・すまん」

相手の消え入りそうな響きの謝罪に、秀康も首を振って苦く笑う。

「謝るのは止してくれ。オレだって・・・アンタが居なくなるのは、もう嫌だからさ・・・」

秀吉の邪気に襲われた時を思い出したのか、笑みを消して暗い表情を浮かべる秀康。

「天海は、色んなモンを頑張って背負いすぎなんだ。アンタはずっと長い間、独りで闘って来たって阿倫ちゃんから聞いてる。でもな、今はオレたちでも手伝えるモンまで背負い込んで、独りで進もうとするなよ・・・」

辛さを滲ませた表情を隠すように己の肩口へ顔を埋めた秀康の肩へそっと手を置いて、天海は静かに目を瞑った。

「・・・蒼鬼、それは違う。私が鬼の力によって生かされてきたのは、幻魔を滅するという使命の為だ。それは多くの仲間たちの屍を踏み越えて行く道でもあった・・・そのような生き方を、私はお前達にさせる訳にはいかない、させたくないと思っているが故に独りで行っているのだ、私が自分で決めた生き方によってお前がそのように苦しむ事はない」

秀康を安心させようと微笑しながら彼の亜麻色の髪を撫でるが、その頭は嫌々をするように左右に弱く振られる。

「アンタはそれで良いかもしれない。だけど、そこにオレの気持ちを混ぜ込ませてくれたって良いじゃねえか」

「お前の・・・?」

「幻魔を倒す鬼武者は、今はアンタだけじゃないって事さ。若い奴にもちょっとは手伝わせろよ・・・それと」

そこまで言うと秀康は天海の身体に腕を回して、きゅうと抱き締めた。

「オレの好きって言葉、いい加減聞こえない振りするのは無しにしてくれ」

若者に抱き締められている状態に首を傾げながら、天海は不思議そうな声を出す。

「好意は受け取っているぞ?聞こえない振りなどしていないが・・・」

天海からの色気のない返事に、抱き締めている秀康の口から、長い溜息が漏れた。

「あのさぁ、天海。もしかして・・・この状況で言われる好きって言葉の意味、分かってないのか・・・?」

「?傍から見れば、誤解されそうな状況なのは理解している」

あくまでも冷静に答える天海に、秀康は苦笑いしながら相手の白髪を指で軽く梳く。

「オレは誤解されても構わないから、こうしてるんだけど」

抱き締める力を緩め身体を離した若者が、慈しむ様な手付きで天海の頬を撫でると、酷く察しの悪い相手の表情が漸く驚いた表情へ変わった。

「待て・・・ちょっと待て、蒼鬼」

いつも冷静沈着を貫き通している相手が、口元に指を添えて落ち着き無さそうに目を泳がせている様を、秀康は楽しそうに眺め、白い歯を見せて、わざとおどけた声を出す。

「やっっっと分かったみたいで何よりだ、天海殿」

「ふざけている場合ではない。お前、何を言っているのか分かっているのか?」

天海からの詰問のような口調に、蒼鬼は面白く無さげに片眉を上げて鼻を鳴らし、腕組みした。

「分かってるよ。むしろ、さっきまでボンヤリ俺に抱き締められていた誰かさんに言われたかないね」

じわりと天海の耳が僅かに赤くなったように見える。

「あ、当たり前だろう!お前の口からそのような言葉が出てくるなど想像もしていなかったのだぞ!」

珍しく言いよどんだ相手に、おやと秀康が意外そうな顔になって腕組みを解き、天海の顔を覗き込もうと顔を寄せた。

「もしかして・・・照れてる??」

顔を寄せてきた秀康から逃げるように顔を背けて、天海は冷静な口調を取り戻そうと、そっと深呼吸する。

「・・・驚いているだけだ」

いやにぶっきらぼうな返事が返って来て、蒼鬼が不可解そうに首を傾げた。

「なんで今度は怒ってるんだよ」

「怒ってはいない」

「じゃあコッチ向いてくれよ・・・そっぽ向かれると、なんだか天海に嫌われた気分になる」

若者の寂しげな声を聞いた天海は、それを無下にも出来ずに相手へ向き直ると、秀康がほっとした表情で頭を掻いている。

「その、ごめんな天海・・・」

「何故、蒼鬼が謝る?」

「アンタがそんなに驚くなんて思ってもいなかったから、かな。何時だったかの夜、こういう関係は慣れているような話し方をしてたからさ、オレもつい軽く言っちまって」

天海は腕組みして口元に手を添えながら小さく唸って、言葉を探すような仕草を見せた。

「慣れているというか・・・そういった関係は否定しない、という程度だ。私自身にそのような話を持ち掛ける物好きは居なかったしな」

淡々と話をする天海を眺めて、秀康が盛大な溜息を吐き出す。

「居なかったとか・・・こっちの気も知らないで、完全に他人事みたいな声出しやがって・・・」

ぶつぶつと文句を垂れる若者を一瞥して、天海が片眉を上げた。

「何か言ったか?物好き殿??」

相手の挑発するような言い方に、蒼鬼はむくれたような顔になりながら両手を広げて声を張り上げる。

「ああ言ったよ、言いました!で、天海。オレの精一杯の告白に対するお返事はどうなんだ?」

ずばり最初の話へ戻せば、途端に天海の動きが一瞬止まり、腕組みをしたまま固まってしまった。

「・・・ちょっと待て、それは」

「ほらまた!一番大事な所になると黙る!!」

「あのな・・・そんな直ぐに返事が出来る内容では・・・」

眉根に皺を寄せて考え込む天海を見ているうち、段々と苛立ってきた秀康がああもう、と抗議の声を上げる。

「難しい話にしてるのは天海のほうじゃん!オレの事が好きか嫌いか、どっちか言えば良いだけだろ!?」

己の思考を邪魔するように返事を急かす若者の声に天海も一瞬むっとしてしまい、深く考えないままの言葉が思わず滑り落ちた。

「お前が嫌いだったら髪など触らせる訳が無かろう!!」

滅多に出さない相手の大きな声に、蒼鬼が目を丸くする。

「・・・・・へ・・・?」

「・・・あ・・・・・」

間の抜けた声を出してぽかんとしてしまった秀康を見て、自分が口走った内容を天海はようやっと理解し、顔に血が上ってくる感覚だけがやけにはっきり分かる。

目の前にいる白髪の浄化師の顔がだんだん赤くなって行くさまを、若者は驚きただ見つめているばかりだ。

「おい、天海・・・?」

「っ・・・今のは、つい、勢いで・・・」

慌てて顔を背けようとした天海の肩を、蒼鬼が捕まえた。

「待て待て、誤魔化すな。いま、オレの事・・・嫌いじゃないって言ったよな」

正面に立っている相手からの静かな問い掛けに、観念したように天海は目を瞑って頷く。

「・・・ああ」

「じゃ、好きか?」

問われた天海は目を開いて少し考えた後、ゆるりと首を振った。

「すまん・・・正直、そこまで分からん・・・」

目の前で初めて見る相手の困り切ったような表情や仕草に、秀康は自分の問い掛けの仕方が性急すぎた事に気付き、別の言葉を探す。

「ええと・・・それじゃあ、オレが天海の事を好きって言ったとき、アンタはそれを聞いて・・・嫌だったか?」

「お前の言葉で不快になった事は無い。むしろ・・・」

地面へ目線を落としたまま言葉を止めると、小さく息を吐き出した。

「久しぶりに心が、温かくなった」

長く幻魔と戦う事だけに自らの生を費やしてきた天海は、己にそのような感情が残っているとは思っていなかった。

過酷な戦いをいくつも経験してゆくうちに、感情というものが自然と己の中で不要になって行ったのかも知れない。

そんな喜怒哀楽の波が随分と凪いでしまった自分へ、蒼い鬼と自称する若者が人懐こい笑顔で話しかけ、じゃれついてくることが不思議で仕方なかった。

でも、そんな若者の様子が邪魔では無くて、自分なりに相手をしていたというのは、きっと。

「おそらく、私はお前の言葉に嬉しかったのだと思う」

他人事のような言い方をする天海を、秀康が驚いた顔で見つめる。

「思う、って・・・」

「すまん、悪気はないのだ、蒼鬼。私は好意というものを素直に伝えられた事が無くてな、それに対する受け止め方も、返答の仕方も分からぬのだ」

それはないだろう、と言いかけた秀康が、言葉を吞み込んだ。

これだけ周りから信頼され、敬愛されている当の本人が、仲間達からの好意に気付かず我が道を歩んでいるという事実を知って、なにやら妙に可笑しくなって来てしまう。

「アンタって・・・面白いな」

「?私の何が面白い」

からかわれているのかと訝しげに秀康を見るが、彼はただ嬉しそうに、にこにこ笑っていた。

「天海さ、トウヘンボクって何回言われた事がある?」

失礼な質問に、天海は僅かに口元をへの字に曲げながらも生真面目に答えを探す。

「数えた事は無い・・・阿倫からは朴念仁と言われているが」

「あ、やっぱり・・・でもさ、天海。オレ、そんなアンタが好きなんだ」

戦場では誰も敵わぬほどの鋭い気を漲らせ、幻魔を掃討してゆく強者の平素が、周りが心配するほどの不器用な人物ということに秀康は惹き付けられていたのだが、そんな相手の理由など知らぬ天海は、妙な顔をしながら鬢の辺りを掻いた。

「物好きな奴だな」

「だって好きになったモンは仕方ないだろ?それに、アンタがオレを嫌いじゃないって言ってくれたなら、これからも好きでいられるし、返事も待てるし・・・な!」

「・・・私に同意を求めるな、恥ずかしくなってくる」

胸を張って満面の笑みを浮かべた蒼鬼の頬をぎゅっとつねってやるが、相手は嬉しそうな様子のままである。

「なぁ天海、いつか、さっきの髪型で一緒に幻魔退治に行かないか?」

似合っている、と無邪気に笑った秀康を思い出して、天海は目を細めて微笑した。

「そうだな・・・お前の前でだけ、なら」

「本当か!?」

「嘘はつかん・・・ふふ、まったく・・・っ!?」

我ながらこの若者には甘い、と小さい笑い声を漏らしたら、いきなり蒼鬼から抱き締められる。

「ありがとな、天海!」

「こら、分かったから離せ!これでは鎧が付けられん」

適当な理由を見つけて抗議のつもりで秀康の耳を軽く引っ張れば、抱き締める力が緩む。

「・・・けち・・・」

小さく膨れながら身体を離す秀康の様子に、笑い出しそうになる自分を抑えながら相手へ背を向け、朱色の肩当に手を伸ばした。

「・・・そうか、分かったぞ」

ふと上がった天海の声に、彼が身支度を整えているさまを後ろで座って眺めていた秀康が首を傾げる。

「なんだ?分かったって・・・」

仕上げに鬼の小手を付けて秀康へ振り返った天海は、悪戯気な光を目に宿していた。

「人懐こい犬だ」

「・・・は?」

「蒼鬼が」

そこまで言うと、天海が口元に手を当てて笑い出す。

「ははは、なんとも邪険に出来ないさまが何かに似ていると思っていたのだが・・・」

天海の言葉の意味を理解した秀康が、顔を赤くして抗議の声を上げた。

「ひ、酷え!!オレと犬を一緒にするなっ」

「それほどお前が憎めず、愛らしいという事だ。怒るな」

穏やかに笑みながら秀康の髪をくしゃりと撫でると、赤みを残した顔のまま相手が黙って上目遣いで見つめてくる。

「さあ支度も終わった、行くぞ」

「・・・ああ・・・」

秀康も立ち上がり、さて皆の所へと部屋の出入り口へ足を向けた時、そちらから声が響いた。

「天海~、まだ準備してんのかぁ?」

出入り口から少女がひょっこり顔を覗かせ、蒼鬼の姿も見つけて目を丸くする。

「なんだ、アオオニも居たのか?どこ行ってたのかと思ったぜ」

「待たせてすまんな、十兵衛。蒼鬼と問答をしていたのだ」

「へ・・・問答?あっははは・・・まさか!こいつが問答なんて難しそうなコト出来るわけないだろ、天海!」

「ふふ、言われているぞ蒼鬼」

「おい・・・十兵衛、なんだよその言い草・・・」

「本当のことだろ?天海と一緒に座禅も満足に出来なかったくせに」

「た、滝行は出来るぞ!」

「自分から体力バカみたいな自慢するなよ・・・」

柳生一族の少女と、鬼の血を引く若者の他愛無い口喧嘩を穏やかに笑いつつ、仲間が居る温かさを天海はじんわりと噛みしめ、そしてそんな場所へ手を引くように連れて来てくれた若き鬼武者へ自然と目が向いていた。



(終わり)





今更、ゲームの新鬼武者の天海どのにカムバックはまりしてしまい、ややっこしい作文書いてしまいました。

蒼鬼がちょっとアホな子みたいになってしまって・・・でも私の中では蒼鬼×天海です。

生真面目で、不器用な天海に対して最初は一方的に好き好きって言っている蒼鬼、という関係ですね。

天海さんはどうしてこんな自分に蒼鬼が好意を寄せるのか分からないし、自分自身もその好意をどうやって受け止めていいか分からない、という困惑が大きいかなと思って書いていました。

恋愛感情とか壊滅的に持っていなさそうなお方なので、天海どの・・・そこが良いのですけど。

また新鬼武者でやらかすかもしれませんが、暇潰しがてらお付き合い頂ければ幸いです・・・