今回はポケノブで長い作文を一本。
取り敢えず、BASARAもポケノブも、みんなラブラブな人達を書きながら自分も幸せにあてられているのが楽しかったりしていますw

BASARA4も、ちまちま情報が出て来ているようですが。
義輝様がシャアってwwwそれだけで漲るwwwついに来たか的な!
信長と久秀の三つ巴とか恐ろしすぎる共演ですなwww

ポケノブ新作出ないのかな・・・もっと作り込めるはずなんだよ、ポケモンとブショーの組み合わせって!!と期待し続ける意味で作文してます。
お時間ある方はお付き合い頂けたら嬉しいなァ☆

抱き締めた腕の強さは

 

 

自分のバディであるポケモンが、運悪く相性の悪い野生ポケモンから急所を狙われたとき、背後から低い呼び声が響いた。

「メタグロス、ボディガードを」

呼ばれたメタグロスは硬質な身体を張って、戦い疲れが出てきていたライチュウを見事に護りきる。

「カンベエどの、ナイスフォロー!いけるかい?ライチュウ!」

バディの明るい声に後押しされるかのように、ライチュウは一声元気に鳴くと、身体を光らせた。

 

「さっきはビックリしたぁ、野生ポケモンは予測がつかないから、流石のオレも焦っちゃった」

「相性を使い分けるのが基本だろうが。まだガードが出来るポケモンを探していないのか」

「探してはいるんだけどさ、なかなか気が合う子に会えないんだよ」

その言葉に、カンベエがちょっと片眉を上げる。

「器用なお前に、合う奴が居ないわけがないだろう」

「それがオレ、結構こだわりがあるから。ここならリンク出来る子がいるかなって思ったのにさ」

気が強いポケモンばっかりだとハンベエは膨れた。

「だけど、カンベエどののメタグロスは格好いいねぇ!今度触らせてよ」

「触ってもいいが、乗るのは許さんぞ」

無邪気なお願いの裏の好奇心を見抜いているカンベエは、ただではハンベエのお願いに乗ってくれない。

「やだなぁ、乗る訳ないじゃん!腕に抱えて貰ったら、夏場の昼寝場所になりそうだなぁって」

悪気の全くないその言葉に、カンベエは親友をじろりとねめつけた。

「私のバディを昼寝道具につかうな」

「解ってるってば、ホントにカンベエどのは冗談が通じないんだから」

悪戯っぽく笑いながら、自分のローブの袖を引くハンベエに溜め息をついて、カンベエは歩いている。

「・・・ね、カンベエどの」

一歩先を歩くハンベエが、二人だけの時にだけ出す甘え声で親友を呼んだ。

冷徹冷血とまで言われる時もあるカンベエが、この声にはどうにも弱い。

「なんだ」

敢えて冷たく、表情を変えないように返事をすると、振り向いたハンベエは困ったように小首を傾げた。

「迷ったみたいです・・・」

慣れない森に入り込んで歩き回るうちに、予想外に広い森に迷ってしまったらしい。

「道標を付けていただろう」

「ウッカリその道標を見落としちゃったみたいで」

ハンベエらしからぬ失敗である。

「とりあえず、太陽が見える位置まで行けば大丈夫だよね?」

「ああ、問題ない」

二人とも太陽と方位から位置の計算などお手のもののコンビなので、大して慌てる事もなく開けた場所を探し始めた。

袖を引いていたハンベエは、いつの間にかカンベエの腕に手をかけている。

「ゴメン、ボケッとしてた」

初歩的なミスから、情けなさそうな声を出したハンベエに、カンベエは低い笑い声で返す。

「全くだ。どうした、何か気掛かりでもあったのか?」

ゆるゆると首を振るハンベエ。

「ないない、むしろ浮かれていたかも」

「・・・訓練に?」

「うん、カンベエどのと二人で訓練なんて久し振りだからさ」

最近のヒデヨシ軍は、ブショーの数が増えて大所帯になってきていた。

そのため、各地に割り振られるブショー達も数が増え、訓練でも大人数で行われるようになっていて、ハンベエやカンベエもその賑わいに巻き込まれている。

「人が増えたからな、ヒデヨシ様の軍は」

「軍としては良いけど、オレが静かに昼寝できる場所が減ったのは不満なんだよね」

「なにが不満だ、私の書斎に入り込んで昼寝しているくせに」

カンベエの突っ込みに、ハンベエは楽しそうに笑って顔を上げた。

「だってカンベエどのの所は静かで落ち着くから好きなんだもん!別に邪魔していないでしょ?」

すっかり甘やかしを見抜かれているカンベエは、溜め息でハンベエの言葉を流すことしかできない。

「・・・まあ、おかしな寝言だの言わない限りは邪魔にならんからな」

「でしょー?」

やり取りを続けながらも辺りに目を配っていたカンベエは、ふと左側を指差した。

「あそこはどうだ、ハンベエ」

木々の向こうに、日光が差し込んで明るくなっていそうな場所がみえる。

「良さそうだね、流石カンベエどの!」

ハンベエも頷いて、そちらへ向かって足を早めた。

 

着いた先は、少し高台になっている狭い草原だった。

狭いながらも見晴らしのよい草原は人が入った形跡はなく、森に生きるポケモン達によって綺麗に保たれているらしい。

「うわぁ、良いねココ」

歓声をあげて喜ぶハンベエを、カンベエが静かに見下ろす。

「道に迷ってみる価値はあったか」

「そうだね、カンベエどのと此処にいられて嬉しいなぁ」

腕を組んで嬉しそうに話すハンベエの言葉に対して、わずかな喜びを感じたカンベエは目を細めた。

早速自分たちの位置を確認し始めるカンベエを横目に、ハンベエは腰を下ろして景色を堪能している。

「おい、ぼんやりしてないで方位を教えろ」

はぁい、とのんびりした声を出して、ハンベエはポケットから方位磁石を取り出して方位を伝えた。

「でもさ、カンベエどの。景色を見た限りだと、オレ達そんなに遠くまで来ていないんじゃないかな?」

きちんと太陽と方位から自分達が行くべき方向を確認したカンベエも頷く。

「そのようだ。迷った内には入っていないな」

「じゃあさ!」

ハンベエは隣に立って居る親友のローブの裾を引いた。

「ちょっと休んでいかない?ココ、風が気持ちいいんだ」

「お前は・・・」

呆れ顔のカンベエに、ハンベエは困った様に肩を竦める。

「正直に言うと、ちょっと疲れちゃって」

口調はいつも元気だが、もともと彼の身体が強くない事をカンベエは承知しているので、彼のその一言に眉根の皺を解いた。

「ならば早く言え、私に遠慮する付き合いか?」

そう言いながら腰を下ろしたカンベエに、ハンベエは甘えるように身体を預ける。

「ありがとう、カンベエどの」

肩口に預けられたハンベエの頭をちらと見て、少し迷った後、カンベエは腕を回して小柄な親友を抱きかかえた。

「確かに良い風が吹くが、身体を冷やすなよ」

カンベエの素っ気ないいたわりと、彼のローブに焚き込められた香のかおりに包まれて、ハンベエは嬉しそうに微笑しながら、胸元でうんと頷いた。

さわさわと澄んだ風が森の木々をそよがせ、穏やかな青空は所々に雲を遊ばせている。

カンベエが疲れから眠ったと思っていた親友が、小さく呼びかけてきた。

「カンベエどの・・・」

囁くような声に、カンベエが抱きかかえていた腕を離そうとすると、ハンベエはその腕に両手を掛けて捕まえる。

「なにかあったか?」

腕を捕まえながら小さく笑う親友に訊ねると、顔を上げた彼は悪戯げにウインクをした。

「傍目からみるとさ、オレ達、恋人同士みたいだなって」

軽い調子で言った一言に、カンベエの眉根に皺が寄る。

「お前・・・この前といい、今といい・・・そういう冗談は止めろ!」

「冗談じゃないよ、オレがカンベエどのを大好きなのはホントだもん」

「・・・好きと色恋は違う」

付き合ってられないと言った様な表情で目線を逸らしたカンベエに、ハンベエは膨れっ面をしてみせる。

「また、そうやってはぐらかす!」

「疲れが取れたのならば戻るぞ、離れろ」

大らかな風潮のランセでは、同性の恋愛に目くじらを立てる事は無いが、そもそも恋愛、という響きの話は、カンベエの辞書では不要物の類にしか載っていない内容らしい。

相手の素っ気ない態度にハンベエは不満げな視線を送っているが、当の本人は素知らぬ顔で立ち上がろうとした。

その時森の奥に、きらりと何かが光った様子に気付いてカンベエは動きを止め、彼の僅かな身体の硬直に気付いたハンベエも小さく息を吞む。

「・・・シャンデラ、メタグロス」

ゆっくりとハンベエを守るように腕を回しながら、カンベエは珍しく二体のポケモンを召喚した。

「カンベエどの、何が居る・・・?」

警戒の響きを混じらせた親友へ、カンベエも低音の囁きで応える。

「解らん。だが恐らくは野生のポケモンだろう」

「じゃあライチュウを前に」

光った方向を睨むように見据えながら、カンベエは否と呟いた。

「此処はお前のポケモンでは分が悪い地域だ。自分を守る事だけを考えろ」

ハンベエも頷き、ライチュウとウォーグルを手元に呼んで身構えた。

親友が注視している方向とは逆の方を警戒しながら、ハンベエがぽつりと呟く。

「・・・来る」

彼の呟きに合わせたかのように、身を屈めていたカンベエがローブを翻し立ち上がった。

「シャンデラ!『焔の渦』を!」

シャンデラが身体を回転させて焔を発生させたのと同時に、森の奥から幾匹かの野生ポケモンが飛び出してくる。

それは蛇型のポケモンで毒を持つ、アーボの集団だった。

カンベエの先制攻撃に、大方のアーボは焔に巻かれて戦闘不能に陥っているが、焔から逃れた二匹のアーボが毒針を撃ち込まんと口を開けながら迫ってくる。

「ウォーグル、頼んだよ!」

此方に近付いていた一匹に向かい、ハンベエがウォーグルを飛ばす。

獰猛な鷲は獲物を見つけると、鋭いくちばしで強烈な一撃を与えた。

あと一匹、と目標へ目を向けたハンベエの前に、突如カンベエの黒いローブが覆いかぶさる。

自分の上からメタグロスを呼ぶ声と、名を呼ばれたポケモンが残りのアーボと戦っているような音が聞こえたが、ハンベエの視界は黒いままだ。

ほんの短い戦闘が終わったらしく、静寂が戻って暫くしてから、カンベエの黒いローブがハンベエの前から離れた。

「良いタイミングだった」

ハンベエから離れながら、カンベエは低い声で親友の勘の良さを褒める。

「ううん、カンベエどののシャンデラが居てくれたから、苦戦しなくて済んだよ・・・ね、さっきのはまさか」

ふわりと離れた友人の仕草に、ハンベエは嫌な予感がして彼に近付こうとした。

「何でも無い。お前に毒針が当たりそうだったからな、メタグロスに防御して貰った」

「・・・本当?」

「ああ」

ハンベエの心配を受け流すと、カンベエは戻ろうとローブの裾を払う。

「何時までも此処に居ると、またあんなのが来るぞ」

彼の言葉に、ハンベエも反論することなく溜息をつきながらゆるりと頷いた。

「はぁ~・・・だね。オレ達は余所者だから」

立ち上がろうとしたハンベエの目に、カンベエのローブの向こうから太陽が透けて見える。

細い糸で織られた彼のローブは、光が透けて見える位に薄いながらも丈夫なのだが、ある一点に小さな穴が開いている事に気付く。

きらりと光が差し込んだ辺りのローブを思わず掴むと、カンベエが非難めいた声を上げた。

「おい!」

「おい、じゃないよ!穴開いてるじゃん!!」

穴が開いていたのは、カンベエの脇腹の辺り。

彼の拒否に構わずハンベエが脇腹の辺りを探ると、着物の一部に冷たい感触がある。

自然と高まる動悸を隠すように恐る恐る手を着物から引き出すと、己の手のひらに紅い染みがついていた。

「・・・ちょっと・・・全然大丈夫じゃないって・・・!」

無意識に腰に付けている道具袋を探りながら、ハンベエは掠れ声でなじる。

相手の様子に、カンベエは観念したような表情で溜息をついた。

「かすっただけだ、刺さってはいない。血も止まっている」

「でも毒針だよ!?早く毒消しを」

己の道具袋には毒消しが入っていない事がわかると、ハンベエは小さく舌打ちをしてカンベエの懐へ手を伸ばしたが、その手は掴まれる。

「私も、先ほど使って無くなっている」

森で迷う前に行われた戦闘で、二人とも毒消しを使っていた。

「だから、戻ろう。ハンベエ」

落ち着いた瞳で、静かにカンベエはそう言った。

しかしハンベエは首を振る。

「駄目だよ。動いたら身体への回りが速まる・・・オレ、薬草を探してくるからっ・・・」

掴まれた手を振りほどいて、薬草を探しに行こうとしたハンベエをカンベエは更に押しとどめた。

「落ち着け。勝手も解らぬ森へ一人で行く事の危うさを解らぬお前ではないだろう。取りあえず、この森を出ることを優先にしよう」

「でも!カンベエどのの・・・」

焦りかけている友人へ、カンベエは敢えて穏やかに笑って見せる。

「大丈夫だ。それに、私には話をしている時間が惜しいのだが?ハンベエ殿」

珍しく不安げな表情の親友の頬を優しく撫でると、カンベエは手を繋いで歩き出した。

「・・・待って、ウォーグルを・・・」

ハンベエは足を止めると、呼び出したままのウォーグルへ何やら話しかけている。

「いいかい?頼んだよ・・・ああ、これを見せてね」

何事か言い含めると、彼はいつも身に付けている長いマフラーをウォーグルに付けてやり、大空へ飛び立たせた。

「救助依頼か?」

「ううん、そんな大仰なことじゃないけど・・・万が一の無いようにね」

バディの飛び立ってゆく様子をちらと確認すると、ハンベエは気持ちを切り替えるようにカンベエに笑いかけて歩き出した。

 

入ってきたときは意識をしていなかったが、予想していたよりも森の奥に入っていたらしく、コンパスを頼りに歩きながら、ハンベエはいつまでも出口が見えない事にじりじりしている。

共に歩くカンベエに不調の気配は伺えないが、随分とやせ我慢をする親友だったとハンベエは気付いて繋いでいる手に力が籠った。

「そんなに力一杯握るな、逃げる訳でも無いのに」

小さく笑いながら彼はそういってくれるが、ハンベエはそれに笑い返す余裕が正直無くなってきている。

「カンベエどの、視界が狭まったりとか、苦しいとか無い?オレの足が速いとか」

「気にするな、大して不調も無い」

「ホントに??だってカンベエどの、通常でも顔色が悪すぎるから・・・」

額に浮いた汗を拭いながら、カンベエの口元がへの字に曲がった。

「悪かったな、この顔色は元からだ」

「あっ、ううん、責めてる訳じゃないんだって!」

からかう余裕も無いまま、慌てて後ろの友人へ目をやると、カンベエは珍しい事に口元に微笑を浮かべながら歩いている。

「私ごときの事で慌てるな。それでは、ヒデヨシ様の窮地を救えないぞ?」

彼の言葉を受けたハンベエは口元を引き結んで、前を向きなおって歩く。

「ヒデヨシ様とカンベエどのは違うよ。それに、カンベエどのは『私ごとき』なブショーでもない」

大事な大事な親友なのだ。

己のつまらないミスから、彼を死なせてしまう可能性がある状況に陥ってしまった事に、本当は今にも足が止まりそうな位の後悔を抱えて歩いている。

ハンベエ、と後ろから親友が呼びかけた。

「戦場にいる時の心構えは忘れていないな?」

振り返らずにハンベエは頷く。

「大丈夫、忘れてない。いつだってオレは冷静に判断できるよ」

「なるほど。愚問だったか・・・忘れてくれ」

コンパスを確認しようと手元に視線を落とした時、握っていたカンベエの手がするりと抜けた。

慌てて後ろにいるカンベエへ目を遣ると、彼は片膝を付いて肩で息をしている。

「カンベエさんッ!」

尋常ではない汗をかきながら、カンベエは強い目付きで心配そうなハンベエを見つめた。

「先に行け。少し・・・休んでゆく」

「駄目だよ!ここで休んでしまったら・・・離れてしまったら駄目だって!!」

体力ぎりぎりの所までカンベエは堪えて歩いてきたのだろう、ハンベエの言葉にも直ぐ返事が出来ずに、近くの木に寄りかかって苦しげな呼吸をしている。

「戦場での、心構え・・・忘れていない・・・と、言っていただろう・・・」

時に冷酷にならねばならない心構えを、彼は今、遵守しろと言っていた。

しかしハンベエは強く首を振る。

「違う、此処は戦場じゃない!立てないのなら、オレが連れて行く!」

「同じ事・・・野生のポケモンが、住む森など」

ウォーグルの声はまだ聞こえない。

「それに・・・・・・お前に、私は・・・抱えられんだろうよ」

動けなくなったカンベエの顔色が、目に見えて悪くなってきた。

「カンベエさん、傷薬は飲める!?意識を落としたら駄目だよ」

己に縋り付いて必死に声を掛けるハンベエへ、カンベエは視線の定まらない表情で小さく笑う。

「そう・・・したいがな・・・」

カンベエの額の汗を拭き、砕いた傷薬と水を飲ませながら、ハンベエは親友の名を呼び、手を握って意識を失わせないようにすることしか出来ない。

「だいじょうぶだ・・・私がアーボの毒で、死んだ・・・なんて笑い話にしたくは、無いからな・・・」

「当たり前だよ、こんな事でカンベエさんが居なくなる訳も・・・」

冗談で返そうとしたが、不意にハンベエの目からぽろりと涙が落ちた。

ぽたりと己の手に落ちたその涙をカンベエはそっと拭い、ハンベエを抱き寄せる。

「今際の別れのような涙を落とすな。ハンベエ・・・」

抱きしめられたその腕に、僅かな痙攣が起き始めていることにハンベエは気付き、小さく叫んだ。

「いけないってば!目を開いて、オレの声に返事をして!!」

ああ、と溜息のような返事を残して、カンベエの意識は混濁してゆく。

頬を叩き、名前を叫ぶが、相手の反応はどんどんと悪くなって来ていた。

「カンベエさん、カンベエさんッ!!!」

絶叫にも近いハンベエの声が、森中に響く。

冷や汗なのか涙なのか解らないものが頬を伝うが、ハンベエはそんなことに気付くことも無く、親友の意識を繋ぎとめようと相手の頬を叩き、必死に呼びかけていた。

パニックを起こしているような状態のハンベエを、突然誰かが後ろから捕まえる。

「ハンベエどの、落ち着くんだ」

落ち着いた声音に、ぐしゃぐしゃの顔のハンベエが振り返ると、そこには己のマフラーを片手にしたモトナリが立って居た。

やっと来てくれたという思いと、間に合わなかったという思いが混ざり合って、ハンベエは声を出せずにモトナリに抱きつく。

「遅くなってすまない。・・・カンベエ君・・・!?これは?」

倒れているカンベエを見つけ、息を吞んだモトナリへ、アーボの毒が、と途切れ途切れに伝えると、彼は黙って頷き、意識を無くしたカンベエの傍らに膝を付いた。

「良く頑張ったね、二人とも。ハンベエどの、落ち着いて。まずは僕が此処に来るまで、彼をどうやって看病してくれたのかを教えてくれないかな?」

「毒消しが手に入らなくて・・・体力を持たせるために、傷薬を少しずつ飲ませていたくらいで・・・」

ハンベエの言葉に、モトナリは優しく笑って彼の手を握る。

「良い判断だった。大丈夫、君の処置のお蔭でカンベエ君は直ぐによくなるさ」

そう言うと、持参してきた道具袋から注射器を取りだし、カンベエの腕にそれをあてた。

「少し毒が回ってしまっているから、強めの解毒剤をうっておこう。もう少ししたら彼は僕が背負って行くから、ハンベエどのは荷物をもってくれるかい?」

ゆっくりとしたモトナリの口調に、ハンベエは漸く落ち着きを取り戻して、自分の顔をぬぐう。

「ありがとう、モトナリさん・・・実はオレのミスで、カンベエさんをこんな目に遭わせちゃって・・・」

カンベエの脈を確認しながら、モトナリはゆるりと首を振った。

「これは誰の落ち度でもないよ。悪い偶然が重なってしまっただけで、君が落ち込む事は無い」

それに、と彼は振り向き、ハンベエに笑みを見せる。

「まさかウォーグルに乗って空を飛べるなんて思ってもみなかったし。カンベエ君には悪いけれど、僕は貴重な体験ができたと思っているよ」

そんなモトナリへ、ハンベエは改めて頭を下げた。

「あの子の表現を理解してくれる人は、きっと貴方しか居ないと思って。来てくれてありがとうございます、ホントに・・・」

いやいやとモトナリは手を振る。

「誠実な子だね、あのウォーグル。血の付いた君のマフラーを、必死になって僕に見せてくれた。僕にじゃなくて、あの子にお礼を言ってあげてくれ」

彼の言葉に、ハンベエはおやと辺りを見回した。

「・・・あれ、そのウォーグルは?」

「もうすぐ、森の出口なんだ。そこで君を待っているみたいだよ」

試しにハンベエが口笛を吹いてみると、少し離れた辺りからバディの鋭い鳴き声が返ってくる。

モトナリはその様子を目を細めて眺めながら、カンベエの様子を観察している。

「ああ、薬が効いてきたかな。ハンベエどの、どうだろう?彼の顔色が僕には解らなくて」

モトナリの後ろからカンベエを覗き込むと、先ほどよりも落ち着いた顔色だ。

「カンベエどのは元々顔色が悪いですからねぇ・・・でも、さっきより良くなった!」

ほっとしたような若者の笑顔に、モトナリも嬉しそうに頷く。

「君が言うなら大丈夫だろう。よし、じゃあ動くよ?」

長身のカンベエを背負い、行こうと促してくれたモトナリに、ハンベエは酷く頼もしい心持ちになる。

「僕は医者が本業じゃないから、戻ったら直ぐに診て貰おう。アーボの毒なら、治療もだいぶん進んでいるから心配ないと思うよ」

「はい・・・」

ほんの少し安心は出来ても、やはりいつも通りの元気が出ないハンベエに、モトナリは先を歩きながら言葉を続けた。

「この話は、ヒデヨシ殿に僕から話しておこう。ハンベエどのはカンベエ君の所にいなさい」

意外な言葉に、ハンベエは驚いて顔を上げる。

「僕も関わった一人だ、ヒデヨシ殿には上手く言っておくよ。城主同士の付き合いと・・・」

軍師同士の付き合いとしてもね、と此方を振り返りウインクしたモトナリへ、ハンベエは笑顔でお願いします、と返事をした。

 

ふわりと意識が浮き上がり、目を開けた先に見慣れた天井があった。

意識を失うまで堪えていた気分の悪さや身体の痺れなどが無くなり、すっきりとした気分になっている。

親友が上手くやってくれたのか、と早々察したカンベエが小さく息を付くと、隣で何かが動いた。

「・・・・・おい」

動いた方へ顔を向け、不機嫌そうな声を出すと、眠そうな声でおはよう、と返事が返ってくる。

「良く眠れた?」

「何でお前が一緒になって寝ている」

隣の布団で、ハンベエが無邪気に笑っていた。

「看病だよ、カンベエどのの顔色の良し悪しが解るの、此処じゃオレだけだもん」

「看病する人間が寝ているなど聞いたことが無いが」

辛辣な相手の言葉に、知らぬ顔の軍師は勝ち誇ったような表情で此方へ顔を寄せた。

「カンビョー疲れ!だってカンベエどの、丸々二日は寝てたんだよ?」

道理で、とカンベエはこめかみへ手を当てる。

気分は悪くないが、眠り過ぎたような感覚が身体のあちこちに残っていた。

上半身を起こすと、ハンベエは嗚呼と声を上げる。

「もうちょっと寝てれば良いのに」

「不調は治った。惰眠を貪る趣味は無い」

さっさと身支度をし始めたカンベエをつまらなそうへ眺めるハンベエ。

「ホント、真面目なんだからカンベエどのは・・・」

ハンベエの声を無視しながら着物を着てローブを手に取った時、障子が開きモトナリが入ってきて、やあと穏やかな声を投げてきた。

「気分はどうだい?もう少し休んでいたら良いのに」

その言葉に、カンベエは正座をしてモトナリへ頭を下げる。

「今回モトナリ殿には多大なるご迷惑を掛けてしまい、申し訳ありません」

カンベエの礼を聞いて、ハンベエも布団から置き上がって共に頭を垂れた。

「オレからも・・・有難うございます、モトナリさん」

そんな二兵衛に、モトナリは緩やかに手を振る。

「そんな畏まらなくっていいよ。僕も君たちに頼られて、嬉しかったし」

「しかし」

生真面目に謝ろうとするカンベエへ、アオバ城主は唇に人差し指を当てて微笑した。

「カンベエ君。こういう時は笑顔で、そうでしたかって言っておけば良いんだよ?」

「ほら、笑顔だって!カンベエどの!」

「・・・・・」

二人にせっつかれて、逆に口元がへの字になってしまった堅物の軍師を、モトナリは穏やかに笑う。

「笑えと言われて笑えるものじゃないか。ま、僕に感謝するよりも、ハンベエどのにしっかり感謝を伝えるべきだと思うな。君を此処まで運んできてくれたのは、ハンベエどのの頑張りだって、カンベエ君が一番解っているんじゃないかい?」

その言葉に、ハンベエがまさか、と笑いだす。

「それは買いかぶりが過ぎます、モトナリさん!今回はそこまで計算できなかったし、オレ」

「ハンベエ」

己の行動を否定しようとしたハンベエに、親友が静かに語りかけた。

二人の様子を眺めて、モトナリは持ってきた水差しを置くと、また後でと部屋を出て行く。

「・・・なに?カンベエどの」

モトナリが出て行った障子を見つめながら、ハンベエは笑みを消して小さい声で問い返した。

カンベエは真っ直ぐにそんな彼を見つめて言葉を紡ぐ。

「モトナリ殿の言った通りだ。お前には、世話になった」

親友からの珍しい感謝の言葉にも、彼は笑うことなく俯いてしまった。

「やめてよ。元はと言えばオレの間違えが積み重なって・・・カンベエどのに迷惑かけちゃったのにさ」

「間違えや失敗など、後で挽回出来れば些末なものだ。お前は間違えを挽回した、己を否定することは無い」

カンベエの淡々とした優しさにも、ハンベエは俯いたまま、布団を握りしめている。

「・・・オレさ、自信があったんだ」

小さくぽつりと、ハンベエが声を発した。

「目の前で誰が倒れても、自分のやり方で物事を進めていく覚悟が出来ているって、ずっと信じてた。だけど、カンベエどのが動けなくなって、自分を置いていくのが戦場での利だと言われても動けなくてパニックになって。そんな自分自身に頭に来てて・・・」

「確かに、あの時のハンベエは判断を誤った」

カンベエが容赦のない追い打ちを親友に掛ける。

ハンベエはそれに対して言い返さず、下唇をぎゅっと噛みしめた。

冷徹な男は言葉を続ける。

「今回はたまたま周りに敵がおらず、モトナリ殿という助けも来たから良かったが、どちらも悪い方に転がっていたら、お前も危うかった。わかるな」

「うん」

「共倒れになっては、ヒデヨシ軍にとっての大打撃になっていた。お前に今更この様な事を話すとは思わなかったが・・・」

しかし、とカンベエは話を止めて、黙っているハンベエの頭へそっと手を置いた。

「私はお前に礼を言わねばなるまい」

はっと顔を上げると、そこには親友が優しげな表情で自分を見つめている。

「!カンベエどの・・・」

「可能性がある限りは努力する、という道をハンベエは私に思い出させてくれた。礼くらいは受け取れ、ハンベエ」

ひどく不器用なカンベエの言葉に、ハンベエの顔に笑みが戻ってくる。

「うん・・・!仕方ないなぁ、カンベエどのがそこまで言うなら、受け取ってあげるよ!」

調子の戻ってきたハンベエに、カンベエは苦笑する。

「そうしてくれ」

「あとさ、お礼がてら一個お願いがあるんだけどな」

ハンベエの提案に、親友が途端に眉をひそめた。

「お願い・・・?内容によるが。言ってみろ」

幼顔の相手が、相手の怪訝そうな声など知らぬ風に、笑顔のまま両腕を広げる。

「抱きしめてほしいんだけど」

「・・・・・!?」

「いいでしょ?誰もいないし」

突飛な願いに、一瞬目を見開いたカンベエだったが、暫く考えた後ハンベエへ近づく。

彼に向かって長い腕を伸ばすと、相手は己の首に両腕を回して抱きついてきた。

「・・・森の中でさ、」

耳元でハンベエが囁く。

「意識が飛びそうになりながら、カンベエさんがオレを抱きしめてくれたこと、覚えてる?」

細い体に腕を回し、相手の体温を感じながらカンベエは咳払いをした。

「私の傍で混乱を起こしていた軍師が居たことは憶えている」

こつんと後頭部を叩かれる。

「あのさ・・・大丈夫だって連呼しながら結局意識が飛んでた軍師も知ってるけど?」

お互いに皮肉を言いあって、どちらからともなく小さく笑い出した。

「まだまだだね、オレたち」

「直したいか?」

いつもなら、こういった部分を直さなくては、と即答するはずのカンベエから、ハンベエに対する問いが零れ落ちる。

ハンベエはううん、と小さく首を傾げた。

「オレは・・・このままでも良いかなぁ。カンベエどのの心配してあげられるの、オレだけだし」

カンベエどのは、と試すように問い返すと、彼は小さく呻いて一瞬言葉を探した様子を見せる。

「・・・情、というものは不要なものだ」

一瞬の遅れの後、いつも通りのカンベエの言葉に、ハンベエがまたかと溜息をつこうとしたが、相手は意外にも言葉を続けた。

「しかしな、悪くは無かった」

ぽんとハンベエの頭を軽く叩いて、カンベエは低く笑う。

「全く、私としたことが」

そんな彼の苦笑いすら、ハンベエには嬉しくて回す腕に力が籠る。

「それもカンベエどのだもん。そのままで良いよ、だけど・・・」

くすくす笑いながら、ハンベエはカンベエの耳元で囁いた。

「何でさっき、モトナリどのが助けに来てくれたって解ったの?オレ、教えてないのに」

当然だ、と親友は呆れたように息をつく。

「ウォーグルに乗って、わざわざあんな森の中まで駆けつけてくれるブショーがどれだけ居るか、そこから考えれば必然の答えだ」

「・・・ですよねぇ、独眼竜を除いて、モトナリどの以外にはいなさそうだもん、ウォーグルに乗って喜んでくれるヒト」

そんな随分な言われ方をされているモトナリは、二人の空気を邪魔できずに部屋の外で食事を持ったまま、相棒のジャローダと一緒に困った顔で鮮やかな青空を見上げていた。

 

 

 

(終わり)

 

 

 

ポケノブでなんか長くなった一本。

とりあえず、仲良しな凸凹二兵衛を書きたかったっていうだけの話です。

ポケノブのお蔭で、二兵衛の存在が身近になった奴は私くらいな気がしますがwww

元は無双の設定からだからね。

BSRの半兵衛と官兵衛は、公式で接点のある話が出ていないので妄想しては楽しんでいますが、こちらの二兵衛はそれなりに関係性が作られているので安心して遊べるという部分があります。

カンベエさんが毒に冒されてもやせ我慢をしちゃうのは、ハンベエ先輩が自分のミスを悔やんで落ち込まない様にという甘々すぎる優しさからだったらいいなーってことで。